妹
言えないんだよね。
何も言えない。私もそうだった。
お祭りの日は、私もみんなのように
夜遅くまで遊びたい。
お嬢さまみたいな服じゃなくて、
もっとビビットな服を着たい。
中学生の頃、高校生の頃、
自分が恋をしているところを、
自分が友達と笑っているところを、
両親にみられるが嫌だった。
だけど、みんながお母さんと友達のように恋愛の話をしたり、お買い物をしたり、テレビを見たりすることを聞いて、すごく羨ましかった。
私も言えなかった。
何にも言えなかった。
ワガママも、文句も、なんにも。
家から出ている時間の全てが内緒だった。
やってることは、みんなと変わらないけど、
私は、いつも罪悪感を感じて生きてきた。
妹は、言えない。
私の服を勝手に着て、
勝手に着ないでよ。って言っても、
ふてくされるだけで、また、勝手に着る。
また勝手に着てるから、
勝手に着ないでよ。って言って、
そしたら、またふてくされる。
いつもは、もう着ないでね。の一言で終わる。
だけど、ある時、
それを見て、何かがプチンって外れた。
勝手に着ないでって言ってるじゃん。
貸してって言ってほしい、それだけだよ。
貸してって言って、いいよって言って、それから借りて。
私は妹が着ている私の服を掴んで
泣きながらそう言っていた。
私が嫌だったのは、服を着られることじゃなかった。
貸して、が言えない事が嫌だったんだ。
私もなんにも言えなかった。
そうしてずっと罪悪感と共に生きてきた。
私は言いたかった。
この家の中で、
自分が嫌だと感じることを、嫌だと言いたかった。
妹にも、
自分が欲してると感じてることを、欲してると言ってほしかった。
いつからなんにも言えない家になってしまったんだろう。
どうしてなんにも言えないんだろう。
その時の私は、
人生で初めて、衝動的になっていて、
自分を止める間もなかった。