かわいそうだね?/綿矢りさ
二股をかけられらてる疑惑のアパレル店員、
樹里恵の話。
性格の悪い女っていうのは、お決まりで小説に登場するけど、
樹里恵は、そんな単純な女じゃない。
確かに、人を小馬鹿にすることもあるし、
嫉妬もきちんとするから性格の悪い女 の条件は、持ってるけど、
私が彼をわかってあげなくちゃ。っていう母性本能みたいな素直な優しさもあって、それが実に樹里恵をリアルへ近づけている。
二股疑惑の女、アキヨさんは、いわゆる天然。って言われるタイプの人。
樹里恵みたいに優しくて母性本能のある人と、
アキヨさんみたいに天然で自由奔放な人、
どっちが可愛がられるでしょうか。
その答えはとても理不尽である。
登場人物の存在がリアルすぎて、というか、
自分と重なったりするところもあって、
話にどっぷりハマってしまう。
いつのまにか、樹里恵と同じ気持ちになって、ゆーっくり、彼氏の家の扉を開けるのを緊張して息を呑んでる自分がいる。
そうやって、ほぼ自分のものがたりのように感じられるようになったところで、
樹里恵がぐっちゃぐちゃに暴れ出す。
私も同じタイミングで心が暴れる。
だけど、樹里恵は、私より何百倍もハードに暴れる。
だから、スッキリするし、面白くて、笑える。
樹里恵『ゴキブリが出ても叫んではいけない女は、必ずいる。』
その通り。